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前回「逃げない勇気。不安障害を乗り越えるためのヒント。その1」 の記事の中で、3つのストレス反応のうちの「チャレンジ反応」について書かせていただきました。せっかくですので、もう1つの反応である「思いやり・絆反応」について、スタンフォード大学の心理学者、ケリー・マクゴニガル氏の著書スタンフォードのストレスを力に変える教科書を元に書いてみようと思います。



ストレスと友達になる方法

まずはTEDでのケリー氏のプレゼンテーションをご覧下さい。(設定で日本語字幕を選べます)


Kelly McGonigal: How to make stress your friend

私がストレス反応について興味を持ち、ケリー氏の著書を読むきっかけになったのは、このプレゼンテーションでした。
それは「ストレスは害になるから避けるべき」といった今までの常識を覆すものでした。

ストレスに対する 考えを変えたら ストレスに対する体の反応を 変えることができるのです

とケリー氏は、このプレゼンテーションの中で述べています。



思いやり・絆反応

経済的、社会的に大きなストレスが加わると、一般的には「脅威反応」とも言われる「闘争・逃走反応」というストレス反応1つしか現れないものだと、私も含め大半の人が思っていたかと思います。

ストレスは悪であるという刷り込みは、この反応ばかりが誇張されたからです。

けれど実際にはそれ以外に「チャレンジ反応」「思いやり・絆反応」という2つの反応がある事が科学的に証明されています。

その中で私が最も感動したのは「思いやり・絆反応」でした。強烈なストレスを感じた時、人が利他的になるなんてちょっと信じられませんよね。ストレスと思いやりは対極な存在としか思えません。

「思いやり・絆反応」とは
ストレスを感じると、仲間を守ろうとする本能が表れます。その本能の表れ方は、男性と女性では異なる場合もありますが、男女ともに持っています。男性も女性もストレスを感じているときは、仲間を強く信頼し、寛大になり、自分のためを思うよりも仲間を守ろうとします。



オキシトシンの効果

オキシトシンという、最近注目されていて有名なホルモンがあります。「ハッピーホルモン」または「抱擁ホルモン」などと呼ばれていて、人と親密に触れ合う事で分泌されるホルモンです。

このホルモン、実はストレスホルモンだったんですね。

強いストレス下に置かれた時、オキシトシンが分泌されることによって、誰かに支えてもらいたいと感じ、また人と繋がり、守り合い助け合いたいという気持ちが強くなり、そうすることで更にこのホルモンが分泌されて、ストレスから早く回復出来る。これが「思いやり・絆反応」の仕組みなのです。

またオキシトシンは脳だけでなく、体も助けてくれる働きがあるそうで、オキシトシンが 心臓の細胞を再生し、ストレスで起きる ダメージを治してくれるのだそうです。これってすごいことですよね。

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非常時に起こる利他的行動

私が「思いやり・絆反応」と聞いて真っ先に思い浮かんだのは、東日本大震災の時のことでした。

道路が寸断されて被災者が取り残された場所へ、物資を届けようと被災地に乗り込む個人の人々や、多額の寄付をする芸能人、テレビが伝える惨状を見て何か出来ることはないかと、国民全体が心を痛めながらやきもきした日々は、まだ記憶に新しいです。

被災された方達同士の繋がりも報道されていました。自分のことは置いてでも人を助けようと寝ずに活動する人や、家族を残し被災者のために尽力する公的職業の人々など、皆が助け合うために必死でした。

そういった大惨事に大きなストレスを感じた人の中でも、周囲の人達と助け合ったり、辛い話を共有し合ったりした人のほうが、自分1人で乗り越えようとする人よりもストレスから立ち直るのが早いのだといいます。

「利他主義」は自分をすり減らす事ではなく、他者をいたわることで「勇気」「希望」が生み出されるそうなのです。

トラウマを体験した人は、周りの人の手助けに時間を多く使うほど、本人も幸せになり、人生により大きな意義を感じられるようになります。

ストレス下にいる人に 手を差し伸べるようにすれば 自分の中に回復力を 作り上げるのです



利他的行動が死のリスクをゼロにする?

興味深いデータがあります。
経済的惨事や 家庭危機などの 重大なストレスを経験すると 死のリスクが30%増加します ー中略ーしかし 皆が皆 増加してはいませんでした。 他の人への思いやりに 時間を費やした人々には ストレスから来る死亡の増加は 全くなかったのです。ゼロです。

スゴい事ですよね。ストレスを感じる事で人は利他的になり、その事が死のリスクをゼロにするんです。

要するに自分1人で目標や困難に立ち向かう必要なんてないわけです。

ストレスの中で孤独感を味わう人はうつ状態になりがちです。ストレスから来る孤独感を和らげるには、他の人達の苦しみに気付く事、自分の苦しみを打ち明ける事なのだそうです。


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最後に

もちろんここでお話ししているストレスとは、日頃の小さなストレスのことを指しているのではありません。

しかしストレスは「害」ではなく、ストレスへの考え方を変える事によって、自分の強い味方となってくれるという基本的な考え方を知れば、ストレスをただ恐れ避ける必要はなくなりますよね。

今回は「思いやり・絆反応」について、ほんの一部分ですが紹介させていただきました。他にも本書にはストレスについてもっと理解が深まり、学びと成長のお役に立てるコツがたくさん散りばめられているので、手に取って損のない1冊だと思います。

良書です。

スタンフォードのストレスを力に変える教科書